スペイン黄金時代は終わったのか?

2013年のコンフェデレーションズカップ決勝は開催国ブラジルと欧州チャンピオンにしてW杯チャンピオンのスペインとの対決になった。
世界中が拮抗した好試合を期待したが結果はスペインの完敗だった。2011年から続いていた連続無敗記録は26試合で終わった。


〜栄華を極めたスペインサッカー〜
2008年以降世界サッカーの覇権はスペインが握った。
代表チームは史上初めてEURO2008、W杯2010、EURO2012と主要な国際大会を3連覇し、
その代表の主軸選手が多く所属しているバルセロナが08-09と10-11のCLを優勝した。
またスペイン代表は2007年から2009年までの35試合無敗、今回止まった26試合無敗などの記録を作った。
記録だけではない。
スペイン代表とバルセロナの見せた、圧倒的なボール支配率のもと、長短のパスを素早く繋ぎ常に攻撃し続けるサッカーは世界中のファンを魅了した。
両チームは"史上最高"という形容詞とともに語られた。
しかし現在、状況は微妙に変わりつつある。

〜落日のスペイン〜
2013年、スペインサッカーはそれまでの強さを見せることができなかった。
スペインのクラブは昨シーズンに続きCLの決勝進出を逃した。
象徴的だったのは今シーズンのCLの準決勝、バルセロナバイエルンレアルマドリードルトムント
ドイツ対スペインという構造となった準決勝はドイツ勢の完勝となった。
特にバルセロナバイエルンではこれまで見せてきたバルセロナの華麗なサッカーは鳴りを潜め、バイエルンの完璧な試合運びを前に合計スコア0-7という驚くべきスコアで敗れた。
コンフェデレーションズカップ決勝でも同じくスペインらしいサッカーを見せずに0-3でブラジルに完敗した。
この2試合はスペインサッカーの退潮を強く予感させるものになった。


〜衰退したのか?〜
ではスペインサッカーは本当にこのまま没落期に入ってくるのか?
結論から言うと、"そうとは言えない"と思う。理由は3つある。

  • まず過去2シーズンのCL準決勝進出8チームのうち4つがスペイン勢であること。

これはイングランド勢が1つ、イタリア勢は0であることを考えるといかにすごいことかわかる。
ただ付記しなければいけないのはスペインの4チームとはいずれもバルセロナレアル・マドリーであることだ。
競争力という観点から見ればリーガエスパニューラの寡占状態はあまり良くないものだと思う。
短期的には力を集約できるという点で利点はあるが、長期的にはリーグ自体の魅力を下げ、サッカー人気の減少につながる可能性がある。

準決勝のイタリア戦は確かにあまり良くはなかったが、ウルグアイ戦では以前の輝きを見せ、
依然としてスペインが強豪国の名に値するチームであることを示した。

他国の代表クラスの実力がありながら現代表の層が厚いため選出とならなかった、若手が下の年代の大会で見事に
その実力を見せつけることができた。これはスペインにとっては最大の好材料である。


〜一極から多極へ〜
とは言え、スペイン黄金時代はその幕を閉じつつあると思う。
私見を述べれば、スペイン黄金時代を支えたキーマンはやはりチャビ・エルナンデスであった。
よくパスサッカーを中心のない"ネットワーク"のようなものだと語られることがあるが、私はそうは思わない。
バルセロナでもスペインでもパスサッカーの中心には常にチャビがいた。
彼の送り出す長短のパスとキープ力は世界でも比類なきものだったし、彼の年齢に伴う衰えがスペインサッカーに大きな影を落としているのだと思う。
ではこれからサッカー界はどうなるか?
わたしはポストスペイン時代とも呼ぶべき過渡期に入っていくと思う。
世界を見渡す限りスペインのような圧倒的存在感を持ったチームは見当たらない。
つまりどこか突出したチームが出てくるということはなく、多極化つまり群雄割拠のような状態になって行くと思われる。
もちろん強豪や中堅と言った流動的な枠組みを存在し続けると思う。
特にスペイン、ブラジル、ドイツ、アルゼンチンは強豪国としてリードする存在となるだろう。
来年のワールドカップは拮抗したパワーバランスのもとで行われ、沢山の好試合が期待できると思う。
すでに胸が躍る気分である。